宮崎クライミング遠征 part2

宮崎の岩場にはじめて訪れたのは、3年前の11月。宮崎登攀倶楽部の方々の熱烈なおもてなしとクライマー精神に触れ感激した。このたび、大きな目標であった『雌鉾岳 大長征』をついに登ることができた。自分たちは未だ駆け出しのひよっこだが、ほぼいっちょまえのクライマーになるべく、石橋をたたいて壊しながらも少しずつステップアップしてきたのだなあとしみじみ感慨にふけっている。

と同時に、300mの大スラブを抱える圧倒的な岩壁の規模、一つ一つグラウンドアップで作り上げたという壮大なクライミングルート、九州から世界へ飛び出した超絶なテクニックのクライマーたちを前に、ただただ、とんでもない世界に魅了されたものだなあと人生の不思議を思わずにいられない。

 メンバー

  Y村さん、A山さんパーティ

  チームヒッキー(ヒッキー、ぽっぽ外;Pさん、Iがき、Sやん)

 山行記録 (チームヒッキー)

山名;宮崎県 比叡山・鋒岳

カテゴリー;マルチピッチクライミング

行程; 

2020/11/3 晴 ニードル左岩稜3ピッチ① ヒッキー・P ②Iがき・Sやん 1210千畳敷 1229取り付き 1308セカンドクライムオン(ヒッキー) 13352P目(ヒッキー) 1505 ①組3P目ニードルの頭終了 1525 ②組3P目ニードルの頭終了 1525懸垂下降開始 1638 2回目懸垂下降開始 1750千畳敷

2020/11/04 晴 雌鉾岳 大長征 ①ヒッキー・P ②Iガキ・Sやん 0642 駐車場発 0730 取り付き着 *2組先行 0825クライムオン(P)1120 スラブルート取り付き着 1140 トポ9P目クライムオン(P) 1410 ①組登攀終了 1420 ②組登攀終了 1430 下山開始 1525 見晴台 1617 パックン岩着 1625 パックン岩発 1636 取り付き着 *デポ回収 1719 駐車場着

2020/11/05 晴 ・サマーホリデー83取り付き確認 ・ニードル左岩稜1P目のWフレークをトップロープで登る

いざ、ニードル目指して

比叡山の岩場でひときわ尖ったニードル、前回登っている3人は、順番を変えて登る。

早ければAピークまでと思ったが、登るのは速くなっていないのでやはり時間切れ。

1P:(P)

オリジナルルートを選択。(まだまだWフレークは無理) フェ-ス壁と向かい合う岩に登って立ち上がり、ピンをかけてからスタート。左の壁に移ってさらに重なった岩を登り切ってから左に移って終了点があるテラスへ。 この辺りはピンがないのでカム使用(#1未満)(P)

 

2P:(ヒッキー)

 左からフレークに向かって登る。前回同様残置カムあり。残置のすぐ右横に#0.75セットし、ヌンチャクをかげて上がる(心配なので残置にもかける)。フレークの上部にも、前にはなかった残置カムあり。この右横に#0.5を入れる。そこから右へのフィンガートラバース。ガクガク動く岩は相変わらず動いていた。

3P:(P)

左のクラック登りから。クラックの奥にガバあり。 プロテクションをついついとりたくなるが、最後のスラブまで使い切らないように要注意。(カム2セット使用~3番まで)

ニードルの頭から下界を見ると、真っ白な河原がうねり、濃い緑の合間に色づいた木々がなんともいえない。でも、ここはニードルのてっぺん。うっかりするとずり落ちそうで何度もセルフを見てしまう。

DSC_1512

懸垂:

3Pと4Pの間のコルに懸垂下降して下降路を利用するのが最善の方法。クラックにロープを挟まないよう注意し、ブッシュをかき分け(太っている人、要注意らしい)登山道へ下る方法だ。

前回は登ってきたラインに忠実に懸垂したので、時間短縮で同様に下降するつもりが右に流れ、「ニードル正面壁ルート」を降りることに。まあ、これなら2ピッチで降りられるかと思ったが、なんと2ピッチ目の空中懸垂中にロープの結び目が!登り返してロープの結び目をゆるめる。じわじわ少し降りて壁に移り、セルフをとって結び目をほどいた。あ~、汗かいた!懸垂開始のところでロープの擦れがきつく回収が大変だった。メンズ二人に感謝!

「ニードル正面壁ルート」は難易度高いルートだが最近は登られていないようで、リングピンは針金のようになっていた。

さて、次回は、ニードルの頭から頂上まで行けるか?

Y村さん、A山さんパーティの報告を聞くと、登攀能力がもっと上がらないと無理そうだ~。

本日のお宿にて、いぶりがっこなどをあてに、美味しい差し入れのお酒を(本日はほどほどに。。。)

DSC_1516

そしてPさん特製のキムチ鍋、チーズトッピング~。めっちゃ美味しい!!Iガキさんが、ニードルでクラック登りをしすぎて(フェースの方が簡単だが、クラック登りにこだわったようだ)、どうやら膝をかなり痛めたようだ。明日は本番だよ。大丈夫かな!?

◆大長征

Iガキさん、昨夜からシップをはり冷やすも、どこまで行けるか自信がない。パートナーのSやんと無理だと判断した時点で二人は引き返すことになる。おそらくギリギリの判断になるだろう。体調、気持ち、技術様々な面からの判断は難しいが二人に任せることにする。

さて、雌鉾岳のスラブは、横幅400m、高さ300m近くあり、下半分は比較的傾斜が緩いが(その分ピンはない)上部になるに従って熊本城の武者返しのように切り立ってくるという。前回は下3ピッチで、雨のため敗退している(このときの雨は天の恵みであったと思うが)。今回は、ピンが多いという「美しきトラバース」をあぶみで登ることも考えたが、初志貫徹「大長征」を登るのだ!無理なら撤退する(か落ちるか)のみ!4人ともあぶみをえい!と宿に置いて出発!退路を断つ!

出だしのピッチ。ここはまだ余裕がある
美しきトラバース。かなり切り立っている。

1-3P(P-ヒッキーP) 前回登ったので落ち着いて登る。前には2パーティ。1パーティ目はゆっくりだが、2パーティ目は大阪のつよつよクライマー3人。かっこの悪いところは見せたくない。

4P(ヒッキー) さてここからが本番。右の大きなバンドへ向かう。あと2mでロープが足りなくなり、心底びびりながら8mほど引き返す。つよつよクライマーは、ひなたぼっこしたり、きゃっきゃと写真を取合って時間待ちだ。

5P(P)後発隊も、登攀続行を決めたようで一安心だ。美しきトラバースを快調にどんどんすすむ。

6P(ヒッキー) 5級マイナスだが落ち着いてトラバース。思ったほどルートは上下に行かず。まっすぐのラインをとる。後発のIがきさんも腰がぴったり岩にくっついている。調子がよくなっているのがわかり一安心。

7P(P) ほぼ歩き?に変わる。美しきトラバースから4つめが、大滝左ルート(大長征上部)のはじまりだ。

8P(ヒッキー) ロープ足りず、すこしだけほぼ歩き。松の木を背にした取り付きは明確なので(そこから見上げる坊主の風景は写真で確認すみ)、そこで支点をとる。本当に岸壁の端っこまで歩く感じだ。60mロープであれば、楽になると思った。

10Pを登る。気持ち95%発揮!

9P(P) 5級のスラブ。ルートも支点も明確に見えるが、最初のボルトが遠い。しかも、次第にかなり細かくなるので、とてもリードではいけない。Pさんが「唐揚げ~、唐揚げが食べたい~。」といつもよりひときわ大きな独り言を言いながら、粘りと我慢の登攀が続く。(今日は飲み放題!唐揚げ食べ放題です!Pさん、がんばれ!)

10P(ヒッキー) 5級+のスラブ。45mランナウトするのにピンは3個!

リードは上を目指すのみ。特に最後のランナウトは大きく長く、最終ピンが見えない。いざとなれば、坊主の元まで登ればクラックで支点がとれると思うが、もしもここでロープが足りなくなったら?と気が気ではない。不安がよぎる。下からピンに見えたものは結晶の輝きだったことがわかり絶望。。。傾斜が緩くなったところに最終ピンがありほっとする。(やけくそで途中カムを挿したがほぼ有効ではない)

11P(P) 一の坊伝いに歩くが結構気持ち悪い

12P(ヒッキー) Pさんのピッチを切ったところはまだルート途中だったため、さらに歩いて二と三の坊主の間へ。ほぼ声は聞こえなくなり、ロープが擦れるためロープでの合図も難しい。要注意。

13P(P) 最初だけボルトがある。あとは、クラック登り。5m。ロープをほどいて、二の坊主の頭を超えると、頂上の札があり、ほっとする。

坊主の頭に到着~。

下降;

はしごがかかっているところから降りる。下降ルートはもっと簡単なところがあるはずだが見いだせず、

かなり遠回りをして下山することになった。途中で自分たちの登ったルートを正面から見たり、パックン岩で写真を撮ったり、それはそれで楽しかった。

大長征は、大きな目標であり、4人で登頂できたときは本当に感無量であった。これ以上のクライミングはない、もうクライミングは止めてもよいとおもうほど、感激した。もちろん、夜は唐揚げ、野菜素揚げ三昧ではしゃぎました。

3日目は、皆で、ニードル左岩稜のWフレークをトップロープで登った。がばがばのハンドジャムからフィンガージャムまで駆使して登らねばならず、フェイスでのぼろうとした前回は全く歯がたたなかったが、Iガキさんが見事なクラック登りでお手本を見せてくれた。おかげで他の三人もなんとか核心までクラック登りをすることができた(Iガキさんは素手だが、他はビレイヤー手袋をして)。登ったとはいえない登りだが、クラックとはこうなんだとはじめて会得することができ、なんだかわくわくしてきた。