前穂高岳北尾根

昨年、けろよんが若手向けに企画してくれたアルプス本チャン山行。昨年は諸事情により中止となり、今年1年越しにようやく実行にこぎつけた。台風が迫る中天候も心配されたが、長丁場の山行を全員無事に完遂できた。

●日程
9月16日(金) 上高地→涸沢
9月17日(土) 涸沢→5・6のコル→北尾根登攀→前穂高岳→吊り尾根→奥穂高岳→ザイテングラート→涸沢
9月18日(日) 涸沢→上高地
※9/18は北穂高岳北尾根(ゴジラの背)を登攀予定であったが、台風接近による天候不良のため下山した。

●メンバー:けろよん(リーダー)、もっちゃん、まゆみん、タケシマ

●装備:テント泊装備一式、登山装備一式
登攀装備:アタックザック、ヘルメット、アプローチシューズ、クライミングシューズ(※)、シングルロープ(50m)、アルパインヌンチャク x10、アンカーテープ/クアッドアンカー、カム #0.4~#3+マイクロカム数本、ホイッスル、その他基本装備
※もっちゃん-タケシマパーティはアプローチシューズのみで登攀

●9月16日(金) 晴れ

あかんだな駐車場からシャトルバスで上高地へ。
7:45 河童橋

9:10 徳沢
10:00 横尾

13:30 涸沢

久々のテント泊&登攀装備を担いで、ヘトヘトになりながら涸沢へ到着。

涸沢ヒュッテの醤油ラーメン
スープが疲れた身体に沁みる
ボルダーが点在していて少し遊んでみる

●9月17日(土) 晴れのち雨

4:30 涸沢出発

暗闇の中ヘッドランプの明かりを頼りに道なき道を歩いて5・6のコルを目指す。
と言っても所々にケルンが多数あり、また踏みらしき道も断続的に続いており、ルーファイは思っていたより苦戦しなかった。ただ浮石の多い急登であり朝イチから気が抜けないタフなアプローチとなる。

アプローチ中に徐々に空は明るくなり、涸沢カールは見事なモルゲンロートに染まった
振り返れば北穂

6:30 5・6のコル

コルに出ると南側の遠くに富士山が見えた。

先行パーティ3組程を先に見送り、我々は最後尾から登攀開始。

北尾根Ⅴ峰

Ⅴ峰の登りはまだロープは出さず、やはり浮石に注意しながらも時折岩をつかみつつ歩いてピークを超えていく。

そしてⅣ峰へ。

Ⅳ峰全景

ピーク付近では色々なラインが取れそうだったが、我々は一番安全かつ早く突破できそうなピークを左に巻くラインでⅣ峰を超えて行く。

Ⅲ峰の登りからロープを出してのクライミングとなるが、ここで先行パーティが渋滞していたのでしばし大休止となる。
先行パーティ出発を待って我々も登攀開始。以降、先発のもっちゃん-タケシマパーティと後発のけろよん-まゆみんパーティに分かれての登攀となる。
ライン取りやピッチの切り方も微妙に異なるので、登攀パートはもっちゃん-タケシマパーティ主観の報告とする(括弧内は体感グレード)。

Ⅲ峰全景

▶1ピッチ目(Ⅲ)もっちゃんリード

簡単な階段状のピッチ。終了点は本来残置ピンがあるが先行パーティが使っていたため、そこからやや左の小ハング下にカムを使って支点構築。

▶2ピッチ目(Ⅲ+)竹嶋リード

右にトラバースして正規ラインに合流しても良かったが、出だしが小ハングとなっている直上ラインが面白そうだったので直上する。本来の終了点はやはり先行パーティに取られていたが、次に狙っていたチムニーの正面に出たのでやはりカムで支点構築。

2ピッチ目終了点からⅣ峰を振り返る

▶3ピッチ目(Ⅴ)竹嶋リード

正規かは不明だがよく登られているラインはチムニー右の石が詰まったルンゼ状ライン(B)らしく、実際先行パーティはこちらを登っていた。チムニー左のフェイス(C)もすっきりして比較的登りやすそうな印象。

しかし真正面に迎える堂々たるチムニー(A, 上部にチョックストーン付き)を見て登攀欲に火が付いたタケシマはそのまま猪突猛進。

最初はステミングで攻めようとするが中途半端な幅で怖い。そのままバックアンドフットに切り替えるが(ザックを背負っていたことを後悔...)、チムニー内部で取れるプロテクションははるか頭上にあるハーケン1本のみ。そこまで体を少しずつ、ずらして、ずらして奮闘しながら移動。落ちたらチムニーの底まで墜落~。スリル満点★★★

チョックストーンの脇をなんとか抜けると次はホールド乏しいスラブ。悪い。しかしここもプロテクションは取れそうにない。アプローチシューズのフリクションを信じてなんどか突破。3ピッチ目の壁にやはりカムで支点構築。ここはチムニー内の音が反響して聞こえてくる。フォローのもっちゃんが「登れなーい!」「ロープ張り気味で!」と叫んでいるのがよく聞こえる。なんだかんだ言いながらノーテンで登ってきたもっちゃん、終了点につくなり「もう!なんでこんなラインを登ったの!」と笑いながら憤慨(?)していた。楽しそうで何より(笑)

▶4ピッチ目(Ⅲ)もっちゃんリード

手かかりの良いクラックを数mほど登った後は岩の階段を右上にあがり適当な場所でビレイ。ここで一旦ロープを仕舞う。

そのままⅢ峰ピークを右に巻きつつ、大きな浮石に肝を冷やしながらノーロープで歩いていく。ピークを巻いたこともありⅢ峰とⅡ峰の境目は曖昧であったが、Ⅱ峰をピークを過ぎて前穂本峰が見えると突然スパッと切れ落ちた部分に出る。ここは懸垂支点が整備されており、ここから懸垂。その後大きな岩の階段を乗り越していけばすぐに前穂高岳頂上に出ることができた。

11:40 前穂高岳頂上

周囲は雲一つない快晴、360度の眺望と達成感に包まれる。

よーく見るとけろよんの頭がヒョッコリ

頂上で記念撮影の後、後続のけろよん-まゆみんパーティを待っていると次第にガスが出てきてあっという間に周囲は真っ白に。かろうじてⅡ峰のピークは見える。少し心配しながら待っていると、ガスの切れ目からけろよんの頭がひょっこり見えて一安心。

13:15 下山開始

吊り尾根を奥穂高岳に向かって進む。最初は激下り。途中一時雨が降る。終盤は急登。中々しんどい。

無駄に背景がカラフル

15:40 奥穂高岳

あまり広くない奥穂頂上は記念撮影待ちの人などでごったかえしていた。
まゆみんは初めての奥穂登頂ということで、まゆみんのみササっと記念撮影。
初めての記念なのに色々と背景のうるさい記念写真に(笑)

16:50 奥穂高岳山荘

小屋で各自暖かい飲み者を頂いて休憩。小屋の内外も多くの人で溢れていた。

その後ザイテングラードを下って行く。
途中5・6のコルへの道が良く見えたが、よくもあんな急登を登ったもんだと驚いてしまう。

18:30 涸沢帰着

行動開始から休憩を挟んで14時間行動。お疲れ様でした。

●9月18日(日) くもり

3日目の朝。上部はガスに覆われていた。

7:00 下山開始

10分ほど下りたところで足を捻挫した男性を発見。けろよん指示のもと、4人で手当資材を出し合いけろよんが応急処置&ストックも貸し出し。なんとか歩けることを確認した後、我々も下山再開(その後、男性から無事下山できたとの連絡あり)。

9:20 横尾
10:30 徳沢園
皆で軽食。タケシマはカレーをいただく(2年連続)。ついでにソフトクリームも食べちゃう。

12:50 上高地
長い旅路がようやく終了。お疲れ山でした。

●所感(タケシマ)
自分にとって初のアルプスでの本チャンを無事完遂でき、達成感で一杯です。おそらく生涯で忘れられない山行の1つになるでしょう。
今回の山行を企画してくれたけろよんリーダー、パートナーのもっちゃん、疲労困憊の中最後まで歩ききってくれたまゆみんに感謝。素晴らしい景色を魅せてくれた山に感謝。